DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
今もそう。疲れてる。
指先が冷えて震えている。
峠道をかっ飛ばすには四月じゃまだ寒すぎるってせいもあるけど、根本的にはチカラを使うペースが速すぎて消耗してるからだ。
体にうまく力が入らなくなってきてて、ヒヤッとする瞬間がある。
あとさ、知らなかったんだけど、バイクのニケツって案外怖いもんなんだな。
後ろに乗るの、地味に怖い。
おれ自身、バイクには乗れる。
フランスにいるときも、五十ccのちっこいやつだけど、ちょくちょく町乗りしてた。
いや、自分が乗るときの感覚があるから、逆に怖いのかもしれない。
文徳の運転が下手って意味じゃなくて、おれの運転と呼吸が違うんだ。
しかも、おれが乗ったことねぇサイズの大型バイク。