DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―



「おおおお誘いいただくのはすごくとっても光栄なんですけれどもっ、わたし、すっ、好きな人がほかにいまして、その人のことしか今は考えられなくて!

生意気を言ってごめんなさいですけど、そういうわけなのでごめんなさいっ!」



折れちゃいそうに細い、かわいらしい声が、おれに驚愕を与える。


ふられたから、っていうんじゃなくて。


何でおれの号令《コマンド》が効かないんだ、って。



慌てふためいた様子で自分の顔や髪をさわる女の子の手に、流行りのブレスレットがはめられている。


天体モチーフのお守りとかいうやつ。


持ち主の胞珠と同じ色の石を埋め込んで、持ち主の生年月日から割り出した守護天体の形を模してあるんだ。



それ、自分のやつ持ち続けてるってことは、彼氏はいないって意味だよね。


いや、いても別にかまわないんだけどさ。


まあ、気になるじゃん、一応。


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