DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


その瞬間だった。


ケータイが鳴った。ピピピピッと甲高い電子音。


純和風の大広間にも、座禅を組んだ和服姿の総統にも不似合いのその音は、総統自身の袂《たもと》から聞こえてきた。
 

総統の思念の声が、おれや煥の疑問に答える。



【きみたちを呼んだのは、当事者になってもらうためだ。私は動いてはならない。私が動くことは、絶対の禁忌なのだ。だから、きみたちに、私の代わりに動いてもらいたい】



総統はスマホを取り出して、画面を見ずに天沢氏に渡した。



「頼む」



総統の肉声は震えていた。


それに呼応するかのように、畳が小さく波打った。


普通の地震じゃあないだろう。震源は総統だ。



天沢氏は会釈をして、受け取ったスマホを操作した。


音量を最大に上げて、通話開始。


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