DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
わかっちゃいたけどさ。
実際にその声、聞いちゃうとね。
「絶望的すぎて笑うしかねぇよなー。うちの親父どの、長江孝興《たかおき》が誘拐犯だって。警察に通報したら、一発じゃん。
自分が経営してる学園に通う美少女を誘拐しましたーって、笑えなすぎて笑えるだろ。サイッコーのネタじゃん。ヤベー、笑える」
制約が消えたばっかりの、痺れの残った体で。
うまく呼吸できなかった喉の、かすれて裏返りがちな声で。
おれは、畳に這いつくばったまま笑った。
痙攣《けいれん》するみたいなぶっ壊れたリズムで、げらげらひーひー言いながら笑った。
視線が集まって痛い。
だけど、おれはそんなの気にしないふりで、狂ってるかのようなポーズを取って、そのまま笑い続けて。