DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


「こっち向け。怒りたいときも泣きたいときも笑う癖、やめてくれよ」


「自分だってそうだろ。文徳だって、いつもカリスマ優等生の役を上手に演じるために、どんな場面でも笑ってみせるだろ。ムカつくほど余裕しゃくしゃくの顔でさ」


「余裕ね。ないよ、そんなもの。だけど、余裕っていうのは、あるように見せかけてるうちに、後からついてくる。

俺は兄貴だしバンドのリーダーだし、煥《あきら》の前でまっすぐ立ってみせるために、強がることに決めたんだよ」


「おれだってさ~、それなりに理由あって、こーいうキャラなんだけど?」



違う。


おれの笑顔と文徳の笑顔では、仮面っぽいところは同じでも、意味合いが全然違う。


おれは、痛いのもキツいのもまともに受け取りたくないから、笑ってごまかしてんだ。


文徳は正反対で、痛くてもキツくても笑っていようって決めたから、仮面をかぶる。


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