DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
長身でイケメンの文徳は、リーダーシップが全身からにじみ出るタイプで、だから人目を惹く。
最前列に座り込んだ常連のファンだけじゃなく、たまたま居合わせるだけの通行人まで集まってくる。
文徳がしきりにアイコンタクトを取る相手がまた、とんでもなく人目を惹く。
いや、目だけじゃねーな。耳もだ。
ヴォーカリストは文徳の弟で、煥《あきら》っていう。
銀色の髪、金色の目。
そして、額にデカデカときらめいてるのは、真っ白な胞珠。
文徳から話だけは聞いてた。
自分の弟もデカい胞珠と異能を持ってるんだ、って。
だから、そんな血筋の文徳にはおれの号令《コマンド》が効かない。
うぜえ、って最初は思ったけど、そのうち気が変わった。
支配関係に持ち込めない相手ってのは案外、気楽だ。