DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
親父がおれと向かい合って立ち止まる。
おれの名前を呼んで、ニコニコと、朱獣珠を要求してくる。
「理仁、渡しなさい。それから、家に帰っておいで。リアもね。半月ほど過ぎてしまったが、リアの誕生日祝いをしよう」
おれの胸の中で、心臓が駆け足で暴れ回っている。息が苦しい。
恐怖がフラッシュバックする。
しっかりしろ、おれ。前を向け。
おれは全身全霊の力を込めて、ひときわふてぶてしい笑みを作ってみせた。
「何か勘違いしてるみたいなんだけどさ~、長江孝興サン。誰があんたに宝珠を渡すっつった?
おれがここに来たのはね、さよ子ちゃんを救出するためと、あんたのその腐った性根を叩き直してやるためなんだよ!」