DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
一曲終わって、拍手が起こって、文徳がコーラスマイクでMCを入れる。
煥は声がいいくせに、しゃべらないらしい。
水を飲みながら、警戒の目でおれを見ている。
胞珠の気配が気になるんだろう。
「銀髪の悪魔、って呼ばれてんでしょ? なるほどね~。その強烈な目つきは、確かに怖いゎ」
文徳のMCにいちいち反応してバカ笑いする連中は、総じてガラが悪い格好をしている。
いわゆる不良ってやつ。
未成年のくせにライヴハウスで演奏したり、普段は不良のたまり場になる駅前でストリートライヴしたりと、文徳たちのバンドはそんなふうだ。
「あいつら、イケてんじゃん」って寄ってくる連中は、不良だのヤンキーだのばっかりだった。