DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
「七つあるんだよね。おれがあんたを嫌いな理由。
一つ目、まずそもそも言葉の通じない相手だった。肉声を使ったり使わなかったり、どんなトーンで話し掛けても、返事しねぇんだもん。
そんな相手、ガキのころのおれの狭い世界の中ではあんただけだった」
まあ、そんなのよくある話だろう。
世の中の父親のすべてが幼い息子や娘と上手に接することができるわけじゃあないんだ。
だけどね、幼いって理由だけで王さまみたいに振る舞えて、しかも他人に命令できるっていうチカラを持つおれにとって、おれのことをまっすぐ見もしない親父の存在は異質で不気味で怖かった。
怖いものは嫌いだった。