DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


抱きしめ返せばよかったのかな?


でも、こういうとき、体が動かないんだよね。


どうしていいかわかんないんだって。ほんとに。



おれの胸とさよ子の体の間で、朱獣珠がまた何か騒いでいる。


おれに聞こえる声で話せっての。


おれがちゃんとおまえの声を聞ける状態になるまで待てって。



だけど、さよ子はその声が聞こえるらしかった。



「持ってってくれていいです。二つでも三つでも、必要なだけ。もう誰にも泣いてほしくないの。

たったそれだけの代償で、そんなに大きな願いを叶えてくれるのなら、やってください。わたし、後悔しないから」


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