DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


どうして? 何のために?


おれのために? おれが何かを失う代わりに?



「ごめん」


「何で先輩が謝るんですか?」


「だって……ごめんね」


「だから、先輩。謝らなくていいし、泣かなくていいですってば。心配しないでください。先輩の願いは、いちばんささやかな形で、これからちゃんと叶っていくから」



また抱きしめられた。今度は、ちょっとだけギュッと。



「ごめん……」


「未来を信じてください。ね?」



小さくて柔らかい胸に顔を押し付ける格好で、おれは何も見えなくなった。


相変わらず自分の嗚咽《おえつ》に邪魔されて何も聞こえない。



おれって本当に無力だな、と思った。


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