DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
地下駐車場のエレベータホールで親父と対決してから、四ヶ月が過ぎた。
本当に、ごくごくフツーの四ヶ月だった。
誰も四獣珠を狙って襲撃をかけてこないし。
おれは学校、姉貴は仕事で、二人暮らしのマンションはお気楽で快適だし。
今さら家族の仲を心配してお節介を焼きに来る親戚もいないし。
チカラは相変わらずおれの中にある。
うっかり調整し損ねた号令《コマンド》のせいで、ナンパしたギャルに押し掛け女房されかける、なんていうおなじみのトラブルもあった。
愛が重いのは怖いって。遊びで十分なお年頃なんだよ、おれは。
もちろんと言おうか、変化もあった。
別の一枝の夢を見なくなったこと。
フツーの予知夢なら、まあちょいちょい見るんだけど。
朱獣珠が声を上げなくなったこと。
すやすや眠ってるみたいな、静かな鼓動だけ感じられる。