DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


正直言って、そのへんはおれにとって割とどうでもいい話だ。


いちばん大きな変化は、母親が反応を返してくれるようになったこと。



泣きじゃくることしかできなかった地下駐車場の一件の後、病院から急な連絡が入った。


母親が高熱を出した、って。



姉貴と二人で慌てて駆け付けて、必死で祈って、夜遅くに母親の熱が下がって、翌朝だ。


目を覚ました母親と、目が合った。


確かに目が合ったんだ。母親がおれを見つめ返した。



信じられなかった。でも、勘違いじゃなかった。



視線が動いて、母親の目は姉貴を見た。


手を握ったら、かすかに握り返してくれた。


ただの吐息とは違う、声の気配の感じられる息を、母親の口が吐き出すのも聞いた。


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