DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
一回あたり三十分か一時間。それが一日に何回か。
目を開けてるだけじゃなくて、目を覚ましてる時間がある。
間違いなく、母親はこっちに戻ってこようとしている。
どうして、って。
きっと、さよ子が朱獣珠と結んだ取引の内容がこれだったんだろう。
さよ子は笑うばっかりで、ちゃんと教えてはくれないんだけど。
さよ子のパサパサの白髪は、どうしようもなかった。
姉貴は美容師だから、尽くせるだけの手を尽くした。
でも、何度トリートメントしても艶が戻らなくて、結局はベリーショートにして染めることになった。
キレイだったんだけどな、さよ子の黒い髪。
四ヶ月経って夏休み真っ最中の今は、地毛も真っ白ではなくなりつつあるけど、ひどく傷みやすいそうだ。
ツヤツヤの天使の輪っかなんか望みようがないくらいのベリーショートが定番になっちまっている。