DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
「さよ子ちゃん、この後、時間ある? 門限、何時だっけ?」
「門限? 今日は先輩と一緒だってパパもわかってるから、連絡すれば、ちょっと遅くても大丈夫ですけど」
不意に思い浮かんだアイディア。
というか、今までどうして思い浮かばなかったのか。
「これ食べた後、うちの母親のとこ、行ってみない?」
「え? お見舞いってことですよね?」
「身構えなくていいよ。最近の母親の様子、教えてなかったよね。けっこう元気なんだよ」
もともと母親はよく笑う人だったから、表情筋の回復がすごく早くて、笑顔を作れるようになった。
調子がいいときは、弱々しくはあるんだけど、笑い声も立てるようになった。
さよ子と母親、馬が合うんじゃないかなって気がする。
根拠はないけど、おれの勘はよく当たるから。
会わせてあげたら、二人とも元気になれそうだ。