DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
「お見舞いって、お花とか買っていくほうがいいですか?」
「いや、花よりも果物のほうが喜ぶ。このカフェ、持ち帰り用のゼリーがあったよね。あれ買っていこう」
「なるほど。それでわたし、何て言ってご挨拶すればいいんでしょう?」
「ん? おれのカノジョ候補とか」
「またそんな冗談を」
「半分くらい本気だけど?」
「五十パーセントも冗談が含まれてるんならアウトですー」
さよ子は、ベーッと舌を出してみせてから、両方の頬にえくぼを刻んだ。
その瞬間に思った。この子と手をつないで歩きたい、って。
それから、ああこれは大変だぞって思った。
さよ子にはおれのマインドコントロールのチカラが効かないんだもんな。
やましい気持ちをきちんと言葉にするっていうのは、すごく大変なことだ。