DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
人影が三つ、車から降りる。
そのうちの一つに、おれの視線は吸い寄せられた。
細身の長身。異様にしなやかで素早い身のこなし。
フードをかぶっていても駄々洩れの、圧倒的なチカラの気配。
【久しぶりじゃん? あんた、おれの姉貴のこと知ってるよね?】
肉声よりもずっと簡単に、おれの思念の声は相手に突き刺さる。
そいつがまっすぐにおれを見た。
やれやれ、イケメンに縁のある日だ。
トルコ系の血が入ってるって言われても納得できちゃうような、鼻筋の通った美形。
この顔がどんな表情を浮かべて姉貴の死体を見下ろしたんだろう?
おれの額の胞珠が熱を持つ。
【何しに来たの? ちょーっと話を聞きたいんだけど、どう? 話す気、ある? てか、話せよ。あんたがおれの姉貴を殺したんじゃねぇの?】
そいつの答えは、無言の突進だった。
まっすぐこっちに攻撃を仕掛けてきやがったんだ。