DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
ピリピリと空気が帯電するように、敵意が、戦意が、殺意が、あたり一帯に放射される。
ひんやりした春の夜気が瞬時にカッと燃え立った。そう感じた。
襲撃者とその連れの二人、おびえるようでいて怒りのほうが強いさよ子と鈴蘭、牙を剥くようにニヤリとした煥と文徳《ふみのり》。
チカラある血の持ち主がこんだけ集まって、にらみ合いの興奮を胞珠で増幅させてんだ。
まわりはみんな、あっさり呑まれちまう。
熱狂が始まる。ケンカだ。
襲撃者の連れの一人が、襲撃者の細い肩に手を置いて何かを告げる。
撤退、とでも言ったんだろう。
襲撃者は仲間の手を払って、先に行けとジェスチャーで示す。
煥が一歩、踏み込んだ。
「よそ見してんじゃねぇよ」
悪魔の顔で笑っている。