DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


接近戦。


繰り出される技を目で追い切れない。


相手の意図は何となく読める。


煥に光の壁を出す隙を与えないこと。


単純な格闘なら互角にやれるから。



あっちでもこっちでも殴ったり蹴ったりの大騒ぎで、熱気と怒号が台風みたいな勢いで立ち上って渦巻いている。


呑まれそうになる。


ついつい、おれも暴れてみたいなんて思ってしまう。



やめてよね。ガラじゃないでしょ。


おれはさ、のんべんだらりと生きていられりゃそれでいいっていう、ことなかれ主義の平和主義を信奉してんだよ。



乱戦のど真ん中のエアポケットで、おれのすぐそばに立つさよ子が「ああぁぁ」と大きなため息をついた。


そして声を張り上げた。



「もうやめて! カイガさん、やめて。帰って! お願い!」


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