DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


カイガと呼ばれたそいつが一瞬、動きを止めた。


一瞬の隙を、煥は見逃さなかった。


シュッと鳴った拳がカイガの顔を狙う。



「おっと」



カイガはバランスを崩しつつ煥の拳を避けて、地面に手を突いて鮮やかに後転した。


何かの弾みで、フードが外れる。


肩に掛かる長さのウェーブした黒髪が広がった。



額いっぱいに、つやめく漆黒がある。


おれや煥、鈴蘭と同じだ。巨大な胞珠。


それを持つからこその、あの身のこなしなんだろう。



さよ子はカイガと煥を交互に見つめて言った。



「いつもいつも、そんなやり方ばっかり。思いどおりに事を運ぶために、みんなそうやって戦うんですよね。何でそうなっちゃうんです?」



煥は、鼻で笑う表情を浮かべて、そっぽを向いた。


カイガもまた嘲笑う表情で、さよ子に答えた。


< 53 / 405 >

この作品をシェア

pagetop