DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
「話してわかる相手なら、いちいち暴れる必要もないんでしょうが、あいにくと、ぼくは対等に話せる相手をなかなか見出せないんですよ。
うかうかしていたら、自分の身が危うくなってしまう。さよ子さんも、経験からそれを理解しているはずですよ」
「でも、わたしはイヤなんです! そんなやり方じゃあ、きっと、めちゃくちゃになる日が来ます!」
「笑わせないでください。とっくにめちゃくちゃでしょう?」
理想だの正義だの、通用する世の中じゃあない。
やっぱそうだよね。
カイガがさよ子のほうへ手を伸ばして、「こっちに来なさい」の合図をした。
さよ子が唇を噛む。
鈴蘭がさよ子の腕にギュッと抱き付いた。
「さよ子、行っちゃダメ。わたしと一緒にいたら、絶対に安全だから。ね?」
カイガが鼻白んだ顔をした。
「絶対、ですか。何を根拠にそんなことを言うのか。絶対なんて言葉は、原理的にあり得ないものですよ」