DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


「話してわかる相手なら、いちいち暴れる必要もないんでしょうが、あいにくと、ぼくは対等に話せる相手をなかなか見出せないんですよ。

うかうかしていたら、自分の身が危うくなってしまう。さよ子さんも、経験からそれを理解しているはずですよ」


「でも、わたしはイヤなんです! そんなやり方じゃあ、きっと、めちゃくちゃになる日が来ます!」


「笑わせないでください。とっくにめちゃくちゃでしょう?」



理想だの正義だの、通用する世の中じゃあない。


やっぱそうだよね。



カイガがさよ子のほうへ手を伸ばして、「こっちに来なさい」の合図をした。


さよ子が唇を噛む。


鈴蘭がさよ子の腕にギュッと抱き付いた。



「さよ子、行っちゃダメ。わたしと一緒にいたら、絶対に安全だから。ね?」



カイガが鼻白んだ顔をした。



「絶対、ですか。何を根拠にそんなことを言うのか。絶対なんて言葉は、原理的にあり得ないものですよ」


< 54 / 405 >

この作品をシェア

pagetop