DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
ポンッ、と横合いから音がした。胞珠が破損する音だ。
おれは一瞬だけゾッとして、音の発生源を探す。
左目から血を流して、うつろな顔で立ち尽くす男がいる。
よかった、文徳じゃなかった。
それだけ確認したら、あとはもう関心が消えうせる。
カイガと二人の仲間は撤退を決めたようだった。
カイガ以外の二人はなかなかの重傷だ。
このまま粘っても得られるものはない、と判断したんだろう。
「また近いうちに皆さんとお会いすることになるでしょうが、今日のところはこれで」
三人とも、じっとさよ子を見ていた。
さよ子は気丈に、にらみ返した。
さーっと波が引くように、乱闘は収束していった。
カイガたちが立ち去ると、煥はようやく拳を下ろした。