DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
「さよ子ちゃんは、あっきーのこと好きなの?」
「鈴蘭は、煥先輩を手に入れたいって言ってました。わたしにもその気持ちはわかるから、たぶん、わたしも同じです。
煥先輩、カッコよくてキレイだから、ほしいです」
ほしいってのが、好きって気持ちとイコールなら。
おれは一世一代の大事なモノを失ったんだよな。
姉貴のこと、あいつに聞きそびれた。
先にちょっかい出したのはこっちって、どういう意味だよ?
「場合によっちゃ、殺すよ」
うっかりして、声に出してつぶやいてしまった。
「え? 何か言いました?」
おれを見上げるさよ子に、笑顔の仮面で応じる。
【なーんにも。それより、腹減ってない? どっか飯食いに行こうよ。おごるからさ、デートとか。どう? 行こうよ。ね?】
「えええええっ、ま、またそんなデートだなんてっ! わ、わたし、鈴蘭とごはん行くことにしていましてですねっ」
ダイヤモンドみたいな両眼は、困った様子でキョロキョロする。
おもしれー子。
からかい甲斐があるし、落とし甲斐もあるってもんだよね。