DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
姉貴ともそういう話、しょっちゅうしてた。
「わたしにもわからないわよ。見つめ合う相手、触れ合う相手と、よりよく意思疎通するために、目や指に胞珠があるっていわれるけど?」
根拠もない一般論。妙にキレイな俗説。
「触れ合う相手かよ。じゃあ、姉貴のコレは狙いすぎじゃねーの?」
左胸の膨らみのてっぺんの淡いピンク色の胞珠。
「目にも手にも胞珠がないから、じろじろ見て探されるのよね。鬱陶《うっとう》しい。わたしの胞珠も、表から見える場所にあればよかったのに」
んなこと言うなよ、姉貴。おれだけ知ってりゃ十分じゃん。
巣穴みたいな二人きりの部屋に隠れて生きた一年間。
溺れるままに時が止まればいいと思った。無我夢中だった。
すぐに終わりが来るってことは最初からわかってた。
いろいろぶっ壊れてるよなってことも理解してた。
たぶん、姉貴も。