DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
海牙は重さなんて感じてない素振りで、三日月刀《シミター》をひるがえした。
「さよ子さんがいないんですよ。どこに隠したんです?」
煥が、おれと文徳をかばうように前に出た。
「知らねえ」
「きみに関しては、そういう答えだと予測していました。煥くんと文徳くんは、個人に過ぎませんから。
バンド絡みで不良少年少女を動員することはできるでしょうが、所詮はその程度の組織力」
「何が言いてぇんだ?」
「そこをどいてください。きみの胞珠には価値がある。できればケガをさせたくありませんし、こちらに加わってくれるなら歓迎します」
「こちらってのは、そのデカい得物《えもの》の支給元ってことか?」
「ええ。ですが、今は丁寧に説明している余裕がありません。そこ、どいてください。ぼくたちがお尋ねしたい相手は、長江理仁《りひと》くん、きみです」