DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


海牙は重さなんて感じてない素振りで、三日月刀《シミター》をひるがえした。



「さよ子さんがいないんですよ。どこに隠したんです?」



煥が、おれと文徳をかばうように前に出た。



「知らねえ」


「きみに関しては、そういう答えだと予測していました。煥くんと文徳くんは、個人に過ぎませんから。

バンド絡みで不良少年少女を動員することはできるでしょうが、所詮はその程度の組織力」


「何が言いてぇんだ?」


「そこをどいてください。きみの胞珠には価値がある。できればケガをさせたくありませんし、こちらに加わってくれるなら歓迎します」


「こちらってのは、そのデカい得物《えもの》の支給元ってことか?」


「ええ。ですが、今は丁寧に説明している余裕がありません。そこ、どいてください。ぼくたちがお尋ねしたい相手は、長江理仁《りひと》くん、きみです」


< 69 / 405 >

この作品をシェア

pagetop