DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
じろじろ見てくるおばさんに、おれはニッコリ笑ってみせた。
【もうちょっと愛想よくサービスしてくれたら嬉しいんだけど~】
そのとたん、おばさんはおれに微笑み返した。
ちょろすぎる。
おれがちょっと本気出して「号令《コマンド》」のチカラを使ったら、何でもやってくれんじゃないの?
くだらねー。
言いなりになる女なんか、もう飽きてんだよね。
元気な盛りの十七歳ったって、相手が誰でもいいわけじゃねーんだよ。
おれはおばさんから顔を背けて、足下に押し込んだ荷物をつかんで席を立った。
おばさんがおれに何か声をかけようとした。
「邪魔」
日本語で声に出して言って、おばさんの肩を突きのける。
あ、全然違う。と思った。
姉貴の肩はもっと低い位置にあった。
ちょっと骨がとんがってる感じだった。
壊れそうだから壊したくなるような、不思議な感触だった。