DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
三日月刀《シミター》の切っ先がおれに向けられた。
海牙の視線、肩から腕のラインと体の軸、三日月刀《シミター》の角度。
ピシッと一直線上にそろった構えがひどくキレイで、場違いなんだけど、おれはけっこう本気で感心した。
「すっげー迫力」
頬のニヤケを自覚する。
これから一波乱あるんだなって予感がなまなましくて、妙に楽しい。
文徳が進み出て、煥と並んで立った。
「さよ子さんの姿が見えないとのことだが、理仁は関係ないぞ。昨日の夜からずっと俺たちと一緒にいた。誰かと連絡を取る様子もなかった。そうだろ、理仁?」
「まあね。日本で使える端末、持ってないし。フランスで使ってた安物を無理やり日本で使おうとしたら、電波か何かの相性が悪かったっぽくて、ブラックアウトしちゃってさ~」