DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


通信用の端末には、胞珠の出す波長を記憶させる。


それをセキュリティチェックに使うのが一般的だ。


電波を飛ばすときにも、胞珠が増幅する思念のなんちゃらを使ってどうのこうの、とかいう文言が端末の取説に書いてあったけど、面倒くさくて読んでない。



端末がぶっ壊れたのは、たぶん、おれの胞珠が規格外だったせいだ。


まあ、通信する相手なんかいないから、別にいいんだけど。


チップに保存してたデータは生きてたし。



海牙はなおも構えを解かない。



「なるほどね。きみたちの答えを聞いて、ぼくは、自分が何を考えているのかハッキリ自覚しました。

ぼくには理仁くんを信用する根拠がない。信用したいという意思もない。理仁くん、ぼくはきみを敵だとしか思えないようです」



笑い声が聞こえた。


体が揺れた。


笑ってるのはおれだと、一拍遅れて気が付いた。



「敵かよ! そうかい、だったら勝手にそう思ってくれてりゃいいけどね。おれが何したってんだ? むしろ、やってくれたのはそっちだろ?」


「何の話です?」


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