DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


「なあ、あんたさ、おれの姉貴に何した?」


「は? 何もしてませんよ」


「じゃあ、どうして逃げた?」


「あの場にいるのが危険だと判断したから。自分の身の安全のためです」


「それ、本当? 何を根拠に信じたらいい? やましいとこがないってんなら、あのとき、おれに一言くらいあってもよかったんじゃねーの?

おれはさ、自分の命より大事かもしれねぇくらいの大事な人を死なせたんだよね。あんた、その現場にいたんだよね」



だんだんと、胃の腑が凍り付くように痛んで、声に思念が混じり始める。


チカラを止められない。



この感情、怒りと恨みと憎しみと、あと何だろう?


何だっていいか。


とにもかくにも、猛烈な激情だ。


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