DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
めちゃくちゃな速さと勢いで、煥と海牙の戦闘が展開される。
煥のチカラ、白い光の板は、大きさも出没も自在の障壁《ガード》だ。
対象を焼き焦がすって作用は副次的なものらしく、煥は攻撃目的では光を出そうとしない。
チカラによらなくても、煥は強い。
煥の攻撃手段は武術だ。
殴ったり蹴ったりだけじゃなくて、膝だの肘だの肩だの、骨が出っ張って硬い部分はどこでも武器になるらしい。
海牙は異様に柔軟な動きで、煥の攻撃を牽制する。
長い手足が鞭のようにしなって、三日月刀《シミター》の軌道がまったく読めない。
それでも煥にダメージを与えることができず、間合いを探っている。
顔にあせりがにじんでいる。
煥は踏み込む。
近ければ近いほど、煥に有利だ。海牙の三日月刀《シミター》は振るえない。
だから海牙は下がる。煥はそれをさせない。
二人ともまわりが見えなくなってんじゃないか。そんな気がした。
何のために戦ってんのか、覚えてんのか?