DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
鈴蘭がうっとりとした息をついた。
「煥先輩、やっぱりキレイ」
「男に対してキレイって誉め言葉、どうなんだろね?」
「だってキレイですもん。完璧だと思いません? 色のない髪も胞珠も、目鼻立ちも。切れ長な目元なんて、本当に最高。
でも、あの金色の瞳、なかなかわたしのこと見つめてくれないんです。なのに、ずるいですね、あの黒い胞珠の人」
「ずるい?」
「ずっと煥先輩の視線を独占してる。あんな強いまなざし、どれだけ美しいんだろうって想像したら、あの人、ずるすぎて憎いくらいですね。死ねばいいのに」
おれは笑った。
「きみ、わかりやすくていいね~」
「だって、ほしいものはすぐ手に入れなきゃ。いつ死んじゃうか、わからないんですよ。
それに、強い思念を込めて願えば、この胞珠がエネルギーを増幅させて、願った未来を引き寄せるっていうでしょ? だからわたし、願うの。煥先輩がほしいって」
その言葉、どこかで聞いた気がする。