DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


生きてるようには見えなかった。


でも、総統は応えた。



【確かに、私には何をするチカラでも備わっていた。だからこそ、何もしてはならなかった。何かを成せば、代償として何かが失われる。それが因果の天秤の均衡だ】


「そりゃまた禁欲的なことで。おれなんかさ~、他人にできないことが自分にはできるって気付いた瞬間から、さんざんいろいろやらかしてきたよ。

だって、楽しんだもん勝ちじゃん? どーせこんなご時世じゃ、長生きできやしねぇんだし」


【私も長生きを望んではいないのだがね。実際、こうなってしまったからには、もう生者には戻れない。それを惜しんでもいない】


「冷静だね。第一印象は、ネジが何本か飛んじゃってる感じだったけど」


【その表現は正しい。右腕を奪われて体内のチカラの均衡が崩れ、暴走を押さえるのに必死だった。

その精神状態のよくないときに、さよ子までいなくなった。そして、きみの思念と感応してしまい、トリガーが引かれた】


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