DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
【そのあたりは海牙くんが計算したことがあったな。残念ながら、地球を割ったり砕いたりするには、エネルギーが足りないそうだ。
とはいえ、人間社会や自然環境を破壊し尽くすには十分なエネルギーだと言っていた】
総統の語り口は穏やかで、だから不気味だった。
こんな場面、危機を煽《あお》り立てるような話し方をされるほうがナチュラルってもんだ。
胃の底がゾワゾワして、吐き気が込み上げた。
おれは恐れてるらしい。
死んでる男と会話することそのものも、男が平然と語ってのける可能性の話も、両方とも怖くて気持ち悪い。
おれはぐるっと周囲を見渡した。
ダンジョンの中は蟻の巣に似てるって聞いてたとおりだ。
天井の低い小部屋があって、何本かの道が続いてて、さらに先にも小部屋がある。
そんな感じで、見通しが利かない。
うっすらと明るい。
光源が何なのかわかんないけど。
あるいは、目で見てる景色じゃないのかもしれないけど。