大好きな先輩は隠れ御曹司でした
言葉少なに聞いていた光希の頬には、いつの間にか透明な雫がいく筋か伝っていた。

「清花ちゃん、幸せだって言ってた。小さい頃に憧れた人が素敵なお見合い相手だったって」

「光希?」

「相手の父親も叔父さんも自分のお父さんと友達だって。大学を卒業する前に結婚式するからドレス見に行くって」

決して責めたくなかったのに。止まらない光希の言葉はどんどん口調が厳しくなる。

「私は知らなかったよ。先輩のお父さんの職業も、叔父さんが小笠原会長だって事も。だけど清花ちゃんは知ってて、みんなから祝福されてる」

「叔父さんって……なんで」

「藤末さんが資料室で内緒話してるの聞いちゃったの。先輩が御曹司だって、狙い目だって。私は先輩と五年も付き合ってて何にも知らないのに。藤末さんは知ってるのに」
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