大好きな先輩は隠れ御曹司でした
「先輩……」

「いつか、ちょっとくらい時間がかかっても、光希なら葛藤をちゃんと自分で乗り越えてくれるって信じてたから。それまで待とうって」

「そう、だったんだ」

「何?俺って、愛しい彼女が何に悩んでるかにも気付かないくらい鈍感な男だと思ってた?」

くすりと笑う声はどこまでも優しい。優しくて、優し過ぎて、光希の胸はもっと苦しくなる。止まったはずの涙がまた溢れ出す。

「ごめんなさい……。先輩が気付いてるの全然分かってなくって、待たせっぱなしで」

「なんで謝るかな。謝る必要ないでしょ。光希は俺と付き合う事が苦しかったのに、やめようとはしなかった。俺と一緒にいる事から逃げなかった。これだけで充分だよ」
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