大好きな先輩は隠れ御曹司でした

客観的に比べたら、光希より清花の方が好条件な事は誰の目にも明らかだろう。言葉を重ねるたびに胸が熱くなり、ますます痛んだけれど、その傷から目をそらして言い切った。

「だからね、先輩。別れましょう」

笑顔で言いたかったのに、身体の中から熱い塊がせり上がってきて苦しくなって、声が弱々しくなる。そんな自分に腹が立って俯いた光希に降ってきた岡澤の言葉はでも、意外なものだった。

「ーーーどうして？」

「……え？」

「清花さんが素敵な女性なのは否定しない。俺もそう思うよ。でも、それと光希と別れるって話はイコールじゃないでしょ？」

岡澤の予想外の反応とロジックに、光希は理解がついていけずにぽかんとしてしまった。

「え、いや……えっと」

「だからさ、光希と別れる理由はないでしょ？」