大好きな先輩は隠れ御曹司でした
そのまま顔が上げられない光希を、岡澤はもう一度抱き締める。

「そっか。じゃあ、タイミング悪かったね」

優しく囁きながら、その腕に力を込めて。決して逃がさないと示すようにキツく抱き締める。

「でも、俺の気持ちだけは疑わないで」

まるで暗示をかけるように心に染み込む声に、光希は小さく頷いて応える。

最初からずっと、岡澤の気持ちを疑った事はない。ただ、自分が信じられなかっただけ。
岡澤が清花じゃなく光希を選んでくれたとして、そばに居る限り「清花ちゃんならもっと」とずっと自分に問い続けてしまう人生を恐れただけだから。

抱きしめてもらっても心の奥はどこか寂しいまま、ひどい疲労感に抗えずに光希はいつの間にか眼を閉じていた。
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