大好きな先輩は隠れ御曹司でした
16.
呆気にとられる藤末達を置き去りにして、光希は岡澤に連れられるまま歩いていく。何を考えたら良いのかさえ分からずに、頭の中は真っ白だ。
ただ目の前の大きな背中を見つめていると、その歩みが急にぴたりと止まった。

「ここでいいかな」

岡澤の声に我に返って辺りを見回した。

「あ、資料室」

「うん。実はここ、鍵も掛かるしね」

悪戯っ子の笑みを浮かべた岡澤がカチャリと内鍵を回した。

「いいんですか?ここ使う人が……」

「大丈夫。今は昼休みだから仕事で使う人はいないしね」

「はぁ」

「だから早く返事もらえる?」

「ーーー返事ですか?」
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