大好きな先輩は隠れ御曹司でした
「でも、オープンにしてたら清花ちゃんとのお見合いの話が出ることはなかったんですよね。私が決断できなかったから……」

光希が自分に自信がなかったせいで、一歩を踏み出せなかったせいで清花を傷つけてしまったのだ。

『その方が岡澤主任の為にも、主任に恋してる女子の為にもいいと思うよ』

静香さんにいつか言われた言葉が胸に刺さる。でも、その通りだったと後悔しても遅いのだ。

「光希だけのせいじゃないよ。冴島光希って人間を愛してるって、俺ももっと伝えれば良かった。」

「先輩……」

いつのまにか溢れ出ていた涙で光希の頬にはいく筋もの水が光る。それをそっと拭いながら、岡澤が温かな声で囁く。

「だからさ、これからは想いをもっと伝えあおう。お互いがどれだけ大事でかけがえのない存在なのか。自分の存在が相手にとってどんなに特別か」
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