大好きな先輩は隠れ御曹司でした
「バカップル……」

二人っきりなら別だけど、公共の場所で岡澤はあまりベタベタしない。それは大人としてのマナーだと思うし、光希自身も恥ずかしいのでそれでいいと思っているのだけど。

「羞恥心はこの際、横に置いときなさい。いかにも恋人って感じでいちゃいちゃしてるのを、うちの社の人間に見てもらうのが目的なんだから」

「あ、じゃあ……」

「タイミングが来ないなら、自分から作っちゃえばいいのよ!」

確かにデート現場を目撃されたら話は早い。後は、付き合っているのか尋ねられた時に頷けばいいだけだ。

「なるべくなら見つかるのは女子社員がいいわね。その方が噂の拡散が早いもの」

自らの発案を自画自賛する静香さんが満足げにアイスティーを飲むのを見ながら、光希は頭の中で行動をシュミレートする。

「じゃあ、なるべく会社から近くがいいですよね。金曜日なら居酒屋でもバルでも何組かうちの会社の人がいますし」

「女子社員に会う確率なら、やっぱりバルじゃない?」
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