大好きな先輩は隠れ御曹司でした

「でも先輩は会社の近くのスペインバル、あんまり好きじゃないんです。あっ……」

詳しい計画を立てながら、光希はある事を思い出して眉尻を下げた。

「ーーー静香さん、この計画って先輩に言わなきゃダメでしょうか」

「ダメじゃないけど、言わないとスムーズに進まないじゃない？でないと、急にいちゃ付いてくる冴島ちゃんに困惑して心配しちゃうかもだし」

「ですよね……」

でも五年も公表するのを拒んでおいて、光希の希望でいきなりオープンにしよう！と言うのはあまりに調子が良くて、申し訳なくなる。と同時に岡澤が納得してくれるかも気になった。

「鋭い人だから仕事の後に会社近くの居酒屋行きましょうって誘えば気付くんじゃない？その時、嫌なら断るよ」

不安が顔に出ていたのだろう。光希を安心させるように静香さんが優しく言ってくれる。

「それにさ、岡澤主任はずっと公表したがってたんだから。冴島ちゃんが言い出した事に驚きこそすれ、嫌がる事はないって。彼のこと、信じてるんでしょ？」

「ーーーはい」