大好きな先輩は隠れ御曹司でした
「くくっ。なんだ、残念」

光希が真っ赤になって拒否る反応に笑いながらキッチンへ戻って行く岡澤の背中に、心の中でごめんなさいと手を合わせる。

光希の熱の原因は多分、風邪ではなく知恵熱だ。

昼間にファイル整理をしながら悩んで考えて、キャパオーバーになってしまったのだろう。終業時間に席に戻った時には頭がぼわんとして、地に足がついていない感覚だった。

「ちょっと冴島ちゃん、大丈夫！？」

異変に気付いた静香さんが医務室に連れて行ってくれて、発熱が発覚。とりあえず岡澤に約束のキャンセルをメールして、そのまま帰宅したのだ。

メールには、

『寝ていれば治るのでお見舞いは不要です』

と書いたのだけれど、相変わらず愛情を惜しまない岡澤はすぐに来てくれて。せっせと甲斐甲斐しく看病してもらって今に至る。
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