大好きな先輩は隠れ御曹司でした
「そうですか?では掲示物、よろしくお願いします」

ちょこんとお辞儀をして岡澤主任のデスクと歩き出す。皮肉を言ったのに思ったようなダメージを与えられなかった女子社員は面白くなさそうだったけれど、それ以上は言えなかったらしくギロリと睨んで行ってしまった。

「ホント、無駄に人気者だから……」

誰にも聞かれないように、口の中でつぶやいてデスクの前に立つ光希を面白そうに見つめて、電話を切った岡澤主任が立ち上がった。

「わざわざ申し訳ないね。じゃあ、ちょっと
場所を移そうか」

「いえ、ここで構いませんが……」

そのまま歩き出す彼に声をかけたが聞こえていないのか、そのままミーティングルームに連れ込まれた。

バタンと扉を閉めて振り向いた岡澤主任は、

「ただいま、光希」

両腕を大きく開いて満面の笑みを浮かべた。

「ーーーはい?」

「だから。ただいま、光希」
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