大好きな先輩は隠れ御曹司でした
会長の小笠原と直接会ったのは入社式以来だ。ぎこちなくなってしまう足の動きに泣きたくなりながら、隅に乗り込む。

岡澤も挨拶しながら乗り込んだが、光希と違って落ち着いている。

「岡澤君」

大きくはない声。低く落ち着いているのに、よく響く。
小笠原会長から呼びかけられて、ゆっくりと岡澤が視線を合わせた。

「はい、会長」

「話しがあるんだ。後で会長室に来るように」

「申し訳ありません。今日は……」

「時間は取らせんよ」

やんわりと断ろうとする岡澤の言葉を遮った小笠原会長の声にはには人を従わせ慣れている響きがある。岡澤もそれ以上は抗えず、小さく頭を下げた。

「はい」

光希は満足そうに小さく頷いた会長を盗み見る。

小笠原会長はどちらかと言えば男性的な容姿だ。中性的な岡澤とは違う。でも口元は少し似ているだろうか?
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