傷だらけの君は
一つ一つ直していくって考えたら気が遠くなりそうだけど、こうなるまで放っていたあたしが悪いんだ。
鋭利な何かが刺さったようで実際には何も刺さってない胸を軽く抑えるあたし。
「あるよ。でもな、同じくらい良いところもいっぱいある。わいはすでに両手両足に収まりきらんほど見つけとるで」
そう言って山崎さんが指折り言っていってくれたのは、あたしですら知らなかった一面で。
あ、あの時の行動見られてたんだ。とか
あの時やったことは間違ってなかったんだって山崎さんの言葉一つ一つに胸が温かくなる。
「まだぜんぶは見つけきれてへんけど、たくさんの良いところが紅の中で眠っとるんや。
そうやな......沖田くんなら、わいよりもずっと見つけてそうやけどな」
山崎さんは開きっぱなしの襖に向かって愉しそうに声をかけた。
「なあ?沖田くん」
「えっ、沖田さん?」
すこしだけ間が空いて、陰から不服そうな顔で出てきたのは紛れもなく沖田さんだった。
「......気付いてたんだ」
「こちとら監察方やで。薬でも切……いや、何か用か?」
「山崎くんにそろそろ任務に行けって言ってこいって土方さんがわめくから」
「はあー……はいはい、御意御意。土方さんは逆にわがまますぎやわ。わい今日は非番やったのに」
山崎さんがよっこらせと重そうに腰をあげる。
「監察方にも非番ってあるの?」
「あるわアホ、舐めとんのか」
沖田さんと山崎さんの会話を聞きながら、あたしはひそかに青ざめた。