傷だらけの君は
「え?......あ、」
あたしは無意識に謝った自分の口を押さえた。
物理的にふさいでしまうのが確実だ。もう遅いけれど。
どうしよう、沖田さんの部屋に入れなくなっちゃった。
「あの、せめて荷物だけでも取りに……」
「荷物なんてほとんどないじゃん」
そうなのだ。だけどそう言われてしまったらもう他に、沖田さんの部屋に入る理由は思いつかない。
な、なんとか慈悲を......
「沖田さん......」
「まあ冗談だけど」
「ですよね、冗談......冗談?」
沖田さん、今冗談って言った?
何が冗談?
どこからが冗談?
流れるように言われた言葉は、油断しているとあたしの頭の中も通り過ぎるところだった。