傷だらけの君は
「ほら」
「えっと、この手はなんでしょう」
「やっぱ腹立つなあ……居心地がいいんでしょ」
伸ばされた手になんの意味が込められているのか理解できずにいると、「ああもう」ともどかしそうに沖田さんはあたしの手を掴んで引っ張った。
「わ、」
予想してなかった動きにあたしの体はすんなり立ち上がって。
通り風が吹き抜けて、沖田さんの黒髪を揺らす。
......この人の髪、あたし好きだなあ。
「......なに笑ってんの?」
「沖田さん、ありがとうございます」
帰る場所があるということ、他人に認めてもらえること。
それがどれだけ嬉しいことなのか、今のあたしにはなんだか分かるような気がした。