傷だらけの君は
陸ノ巻
「ぅ......」
目の前で眠っている小娘は、またうなされていた。
少なくとも俺が様子を見に来たときは必ず額に汗をにじませ、泣いていた。
どんな夢をみたらここまでうなされるんだ?
……俺が見舞いに来てるからか?
しかしその涙を拭ってやる理由もなく、ただただ娘を見下ろす。
......紅。
それがこの小娘の名前だった。
「あれ、土方さん。来てたんですか」
ふすまを開けて入ってきたのは総司で、こいつの腕の怪我も小娘が治した。
誰も治せと命令していないのに、自ら進んで怪我を移させた。
ざわりと胸に何かが渦巻く。
総司が来たのなら、あとはこいつが何とかしてくれるだろう。
いまだ苦しげに声を漏らす娘を置いて俺は立ち上がった。
「......少し出かけてくる」