傷だらけの君は
向かった先は町の外れ、ここに来るのは二回目だった。
ところどころ風穴が空いている小さな平屋。
前に来た時よりも心なしか劣化が進んでいるかのように見える。
扉を荒々しく叩くと、中から怯えた様子の男が顔を出した。
無精髭を生やし、ひどくよれた着流しに身を包んでいる。
がたいがいいだけのこの男が紅の父親だ。
俺の顔を見るなり「なんだお前か」と安堵した様子になる。
そして今にも閉じかけていた扉をすんなりと開けた。
「取り立てかと思ったじゃねぇか」
「どういうことだ」
「だから、金の取り立てに......」
俺は男の胸ぐらを掴んだ。
いまさら扉を閉めようとしてももう遅い。
空いているほうの手で扉を押さえると観念したのか男は扉に伸ばした腕を下げた。
「な、なんだよ。なにをそんなに怒ってんだ......?」
再び怯えたように身を震わせた男は無理やり笑顔を取り繕い、俺の機嫌を取ろうとする。
「あんたは傷を移すことを一言も説明しなかった。なぜ黙ってた」
「だ、黙ってたわけじゃねぇぜ。あいつを使う奴はあらかじめ傷を移すことを知って依頼に来る奴もいるからな。てっきりお前たち人斬り集......新選組の連中も知ってると思ってたよ。それに......」
さっきまで青い顔をしていたのに、興奮してきたのか徐々に饒舌になりながら俺を見上げた。
「そんなちいせぇこと、わざわざ言う必要ねぇだろ?」