傷だらけの君は
「紅の髪、綺麗だよね」
なんの前触れもなくそう言われたのは、沖田さんが非番のある日のこと。
「……へ?髪切れ?」
髪切れって言った?
ぼーっとしてたから全部聞き取れなかった。
そういえば、髪全然切ってないなあ。
あたしは自分の髪に手をやる。
そこまで鬱陶しくはなかったけど、他人から見ればまた違うのかもしれない。
「うん。綺麗」
「じゃあ、あの、切りますね」
「喧嘩売ってる?なんで褒めた矢先に切るのさ」
褒めた?
「沖田さんが切れって……」
言ったから……
なんでそんなに大きなため息をつくんですか?
何かを理解したように哀れんだ目を向けられる。
「ほんっと褒められ下手だよね。普通そんなに聞き間違いしないよ」
切れ。
きれ、きれい
「きれ……あ、あっ、綺麗!?」
「馬鹿」
やっと気付いたかと言わんばかりにおでこをピンと弾かれる。
痛い。けど、嬉しさのほうが断然勝っていた。
沖田さんがあたしを褒めてくれるのは初めてだったから。
だから、聞き間違いなんかで流してしまったのは本当に惜しいと思った。
「えっと、もう一回……」
「言わない」